白ネギの1年:種まきから出荷まで、8の工程と動画9本でご案内します

鳥取・大山の麓で、伯耆富士は1年を通して白ネギを育てています。
種まきから出荷まで、1年で8つ以上の工程があります。

この記事では、その8つの工程をひとつずつ、現場の動画9本とあわせてご紹介します。料理人の方も、田舎での暮らしや農業に関心のある方も、ふだん白ネギを食卓で見かけるだけの方も、それぞれの興味のあるところで立ち止まりながら読んでいただけたらうれしいです。

この記事でわかること

  • 白ネギの1年8工程の全体像(栽培カレンダー)
  • 種まきから出荷までの現場の規模感(数字)
  • すべての工程に対応したYouTube動画9本へのご案内
  • 白ネギに興味を持たれた方それぞれへの「次の一歩」

1. 1年の栽培カレンダー

工程規模感動画
4月種まき(秋冬ネギ)560枚/50万本動画①種まき編
4〜6月育苗管理暗室芽出し1〜2週間+ハウス約2ヶ月動画①ラスト
5月春ネギ用の自社育苗コート種子/4粒植え動画⑥自社育苗
5〜6月定植(苗を畑に植え替える作業)引っ張り君(人力)/2条植え機動画⑦人力定植/動画⑨定植
6〜9月中耕・施肥・除草3回/窒素・リン酸・カリ/黒ぼく土動画⑧花咲き+黒ぼく
7〜9月トラブル対応高温障害/花咲き/雑草動画⑧
9月春ネギ定植自社育苗からの定植動画⑥
11〜1月秋冬ネギ収穫雪・雨を含む厳冬期作業動画③雪/動画④雨/動画②雪後
11月〜3月選果・出荷毎日100ケース500kg/5工程選果動画⑤選果
1〜2月糖度のピーク糖度11°(過去いちばんの甘さ)動画②

2. 工程① 種まき:4月、1年でいちばん大事な10日間

種まきは、白ネギの1年でもっとも精密な作業です。伯耆富士では、560枚のセルトレイ(小さなマスが並んだ、育苗用の浅いトレイ)に1穴4粒で播種します。総数はおよそ50万本になります。※これでも一部に過ぎません。

機械化の中身を分解すると、こんな流れになります。まず、パイオニアという土入れ機がセルトレイに均一に培土を入れます。次に、まくドンと呼ばれる自動播種機が1穴に4粒の種を正確に落とします。最後に覆土と潅水(水やり)を行い、暗室で芽出しを待ちます。発芽までは1〜2週間です。

「4粒植え」には理由があります。発芽率を考えながらも、間引きの手間と苗どうしの競合のバランスがいちばん良いのが4粒、という現場の経験則です。1粒だと発芽しなかったときに穴が空いてしまい、5粒以上だと根が絡み合って、定植のときに苗が傷んでしまいます。

動画①:種まき編「50万粒分の種まき/秋冬ネギの1年が決まる」(13:36)

「50万本。この数で計算したことあんまない」

「1年の最初の結構大事な作業」

動画①より

3. 工程② 育苗:暗室1〜2週間とハウス2ヶ月

種をまいたら、すぐに苗になるわけではありません。暗室での発芽1〜2週間と、ハウスでの育苗約2ヶ月。合わせて2.5ヶ月のあいだ、温度・湿度・水管理をていねいに続けます。

この期間で気をつけているのは3つです。「過湿(水のやりすぎ)による苗腐れ」、「乾燥による発芽率の低下」、「ハウス内の温度差で苗がヒョロヒョロに伸びてしまう徒長」。どれも数字や時計だけでは管理できず、毎日の見回りと現場の感覚で防いでいきます。

4. 工程③ 春ネギ用の自社育苗

伯耆富士では、春ネギ(9月に定植して翌春に収穫するネギ)用の苗(一部)を自社で育苗しています。コート種子という、外側に発芽促進剤をコーティングしてある種を使うことで、機械播種の効率を上げています。17歳の高校生バイトもこの作業に加わってくれます。

動画⑥:初めての白ネギ自社育苗/4粒植えの秘密(19:42)

「楽しくやってるのを友達に伝えてもらうのが一番の宣伝」

「都会からでも全然できますんで是非」

動画⑥より

5. 工程④ 定植:人力と機械、それぞれに役割があります

定植は、育苗で作った苗を畑に植え替える工程です。伯耆富士では、人力(引っ張り君)と機械(2条植え機)の両方を、畑の条件で使い分けています。

動画⑦:白ネギ・人力のみ/手押しで定植(20:52)

動画⑨:白ネギを定植したらこうなった(17:23)

人力定植のメリットは、変則的な形の畑でも柔軟に対応できることです。GPSは使いません。一本の橋を渡すように手で線を引き、引っ張り君を押して苗を落としていきます。深く耕した黒ぼく土(黒く軽い、火山由来の土)の上を歩く作業は、それ自体が下半身のトレーニングにもなります。

「この深い土を歩くのも足越しのトレーニング、体感トレーニング」

動画⑦より

機械定植は、規模の大きい矩形の畑で力を発揮します。新型の2条植え機は、一度に2列を同時に定植できるので、人力の倍のスピードです。ただし機械の調整、苗の規格の統一、土壌条件の事前整備など段取りが多く、機械任せにすればいいわけではありません。

6. 工程⑤ 中耕・施肥・除草:黒ぼく土と火山の話

定植のあと、白ネギは6〜10月にかけて成長期を迎えます。このあいだ、3回ほど中耕(土を白ネギの根元に寄せる作業)と施肥(肥料をやる作業)を繰り返します。施肥は、窒素・リン酸・カリの3要素を時期ごとに使い分けます。

伯耆富士の畑のいちばんの特徴は、黒ぼく土です。これは大山(だいせん)の火山活動でできた土壌で、有機物をたくさん含み、水はけと保水のバランスが本当に良い土です。鳥取県西部は西日本でも有数の白ネギの産地ですが、その理由のひとつがこの黒ぼく土にあります。

動画⑧:白ネギの花が咲いてしまった(19:21)

「黒ぼくは大山の火山が混ざった土。甘みが詰まる」

「噴火したらいい焼きネギができる」

動画⑧より

中耕は、土を白ネギの根元に寄せる作業です。これによって、ネギの「白い部分」が長くなっていきます。3回繰り返すことで、出荷のときに3LからLまでの規格に分けられる、長くてしっかりした白い茎ができていきます。

7. 工程⑥ トラブル対応:花が咲く、雑草、高温障害

栽培の現場では、思いどおりにいかないことが頻繁に起こります。代表的なトラブルが「ネギの花が咲いた」というもの。ネギは本来、収穫の前に花を咲かせない作物です。花が咲いてしまうと茎が硬くなって、商品としての価値が落ちます。原因は、気温の急変や苗の生理ストレスです。

ここで伯耆富士は「規格外を捨てない」という工夫をしています。ネギ油などの加工品アイデアです。生産・加工・販売を一体化する、いわゆる6次産業化への可能性を示しています。

雑草との戦いも、全期間続きます。火山石を含む土には強い雑草が生えるため、機械除草と手作業の組み合わせが必要です。一方でミツバチが飛んでくるといった良い面もあって、生態系全体で畑を見る視点が育っていきます。

8. 工程⑦ 収穫:雪と雨と冬の白ネギ

11月から1月、いよいよ収穫です。冬の鳥取は、ほんとうに厳しい季節です。1日で30cm、累計70cmの積雪があります。雪のなかで軽トラがはまり、機械のベルトが故障し、それでも収穫は止められません。

動画③:軽トラはまった/雪の日 白ネギ収穫(20:02)

動画④:雨の鳥取 白ネギ畑 国際チーム奮闘(21:20)

動画②:雪に埋まったネギ畑 全滅かと思ったら過去一の●●だった(22:00)

この過酷な気候こそが、白ネギに過去いちばんの甘さをもたらします。雪の下で冷気にさらされたネギは、凍ってしまわないように糖を蓄えていきます。その結果が糖度11°という数値です(測定機器・測定日・測定者は別途記録予定)。

「雪のおかげですごい甘いネギに仕上がってる。糖度11°」(動画②より)

「冷たいのがネギたちにとっては美味しい秘密」(動画③より)

雨の日の収穫では、機械が泥を噛んでしまい、手掘りに切り替える場面もあります。インドネシアから来日したスタッフのみなさんが、真冬の畑で日本語を覚えながら一緒に働いてくれています(写真・氏名の公開はご本人の同意確認後に追記します)。

9. 工程⑧ 選果・出荷:5工程の精密作業

収穫した白ネギは、5つの工程を経て出荷されます。第1工程は根切り、第2工程は皮はぎ(白色センサーつきの機械が古い皮を自動でむきます)、第3工程は泥拭き、第4工程は選別(3L/2L/L/M/Sなど5〜7規格)、第5工程は結束+箱詰め(4.5kg/箱、Lサイズ3本束または2本束300g)。

毎日およそ100ケース=500kgを出荷しています。出荷先には広島の百貨店も含まれていて、「過去いちばん」と評価された実績もあります。

動画⑤:選果の快感/白ネギの皮が飛ぶ(26:12)

「ネギ用にエアコンが、人が奪われてしまった」(出荷ピーク時の人手不足を、ちょっとユーモラスに表現したフレーズ)

「黄色い還盤が残ってるネギを選んで」(料理人・消費者の方に向けた、選び方のひとことアドバイス)

動画⑤より

10. 数字でふりかえる、白ネギ農家の1年

項目数値
種まきトレー560枚以上 ※一部
播種粒数50万粒(4粒植え)以上 ※一部
育苗面積約2ヘクタール以上
育苗期間約2.5ヶ月
積雪1日30cm/累計70cm
糖度11°(過去いちばん)
1日の出荷量約100ケース=500kg 以上
選果の工程5工程
主要な出荷先県内・広島・近県の百貨店ほか

11. 動画で、もっと深くご覧ください

本記事でご紹介した9本の動画は、それぞれの工程を収録しています。この記事の文字情報では伝えきれない、現場の音や空気、人の表情がそのまま映っています。よろしければ、YouTubeチャンネルもぜひのぞいてみてください。

業販でのお取り引きをご検討の方、見学・採用にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。